なかなか鉄道業界で導入が進まない「精神障害者割引」のナゼ。課題点を探る

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みずにゃん

どうも、みずにゃんです。

障害者である僕が納得できない、鉄道の障害者割引のシステム。なぜ精神障害者は割引が受けられないのか、鉄道業界の精神障害者割引の問題点と課題点を探ります。

精神障害者割引に消極的な鉄道業界

精神障害者福祉手帳を所持する僕にとって、以前から納得のいかないのが、鉄道路線の障害者割引システムです。

多くの鉄道事業者で「身体障害者割引」と「知的障害者割引」は当たり前のように整備されているわけですが、「精神障害者割引」についてはほとんどの鉄道事業者で導入されていません

イメージ画像(写真AC リニモでは精神障害者1級の方が介助者付で利用する場合に割引が適用される)

民間の大手鉄道会社に限れば、2023年6月時点で導入済なのは福岡の西日本鉄道(西鉄)と近畿日本鉄道(近鉄)のみ。
加えて南海電鉄が導入を確定、名鉄が導入検討中と西の方では拡がりを見せているものの、関東私鉄では導入を決めた大手鉄道会社がありません。
当然ですが、JRグループでも導入されていません。

日本に200以上ある(※1)鉄道事業者のうち、実際に精神障害者割引を導入しているのは、実際に数えたわけではありませんが、1割にも満たないと思われます。

※1 2023年4月現在で鉄軌道合わせて218社局。国交省の資料より。この資料には第三種鉄道事業者も含まれているので、実際に鉄道営業を行っているのは、200社前後という計算。

精神障害者割引を導入済みの鉄道事業者の例

精神障害者割引を既に導入している、先進的な鉄道事業者の事例を紹介します。
(これ以外にも導入している中小私鉄などはあります)

西日本鉄道

福岡の大手私鉄。有人窓口等で駅員から購入する前提ではあるものの、利用区間の制限はなく5割引で乗車できる画期的なシステムが採用されています。
発行元の限定もなく、紙手帳のほかミライロIDでも適用されます。

福岡県では他に福岡市営地下鉄でも精神障害者割引が導入済で、東名阪よりも精神障害者への理解が進んでいます。

近畿日本鉄道

近鉄電車(イメージ 2022年3月撮影)

2023年4月から導入。既存の障害者割引にあわせる形で101km以上の乗車に限り(この部分は詳細後述)5割引。
関西私鉄では、南海電鉄も同じく101km以上の乗車で割引される割引の導入を決めたばかり。

名古屋市交通局

名古屋市交通局の車両(イメージ 筆者撮影)

2015年適用開始。顔写真付きの手帳であれば発行元に限らず使用でき、区間の制限はなく5割引で乗車可能。

ちなみに名古屋市民には福祉パスが配られるので、この割引は名古屋市外の利用者が利用する前提の制度のようです。名古屋市交通局は市外ユーザーの獲得に積極的で、その一環なのかもしれません。

ディズニーリゾートライン(舞浜リゾートライン)

リゾートライナー(イメージ 2023年4月撮影)

同社線は普通運賃260円のところ、駅のキャストに手帳を提示すれば1乗車130円で乗車可能。回数券も5割引で購入可能。

ディズニーリゾートラインの領収書。普通乗車券が割引後の130円で発券されている

沿線のTDRの2パークでは「障害のある方向け」パークチケットやディスアビリティアクセスサービスが導入され、リゾート全体で障害者への体験向上に取り組まれている印象を受けます。

「精神障害者」にだけ割引が導入されない背景は?

では、精神障害者にだけ鉄道運賃の割引制度が一般化されていないのはなぜでしょうか?

イメージ(写真AC)

それは、精神障害者制度そのものが、身体障害者や知的障害者と比べて行政の理解が遅れたのが根本の理由です。20世紀から一定の理解を得ていたのに対し、「精神障害者支援法」は2005年の適用開始で、大きく遅れを取っています。

また身体障害者や知的障害者へは国(政府)が主導で支援する一方で、精神障害者への支援は地方自治体が主導で行うシステムになっていることも、遠因にあると考えられます。

鉄道運賃は国交省による認可が必要であり、運賃に関わる付随の制度も国が主導するものが優先される傾向があります。
最近だと「バリアフリー料金制度」の運賃加算がありますが、このバリアフリー料金制度も国が主導のもとで導入が進んでいるものです。
精神障害者の制度が国主導とは言えないものであり、国交省がバリアフリー料金のように強く導入を促さないことも、鉄道事業者が精神障害者割引を導入しない要因のひとつと考えます。

障害者割引そのものが抱える問題点

鉄道会社が導入している障害者割引については、障害者割引そのものが大きな問題点をいくつか抱えています。

単独で利用できない障害者割引

鉄道の障害者割引は、”介助者とセットで利用すること”を大前提にしている事業者があります。JR各社では旧国鉄の規則に則り「障害者単独での割引適用はできない」ことになっています。
この件についてはちょっと前にTBSが報道しているのですが、その中でJR東日本は「障害者割引の制度拡大は考えていない」とTBSに回答しています。少なくとも、JR東日本は障害者割引に消極的な姿勢なのが明白です。

精神障害者割引においても、介助者ありきの割引になっている部分があります。先日導入が決まった南海電鉄では、精神障害者1級の場合、単独利用は101km以上に限られる一方、介助者ありだと距離制限がなくなります。
また、リニモ(愛知高速交通)では精神障害者1級で介助者付きでしか割引されないなど、制約が大きい事業者も存在します。

身体障害者と違い精神障害者1級は相当重度で自分の意志で移動できるような人がなれるわけではないので、妥当なラインではないかとは考えます。

それ以上に、南海電鉄の精神障害者割引では2級3級で介助者が付くと割引適用できないルールになっていて、こちらの方が問題だと感じます。等級関係なしで一律の割引が受けられる仕組みを作るべきではないでしょうか。

長距離ありきの割引制度になっている

JRグループでは、障害者割引(身体・知的)の適用は片道101km以上の利用に限られています。一部私鉄でもJRグループのこのルールを踏襲している事業者があります。

近鉄はJRグループの割引ルールを踏襲し、身体・知的の方であっても長距離の利用のみが割引対象と位置づけられています。同社の精神障害者割引もおおむね既存のルールを採用しているため、長距離ありきの割引制度になっています。これでは日常の利用では割引が受けられず、アンフェアに感じます。

精神障害者にこそ、公共交通の運賃割引が必要だ

僕は思うのですが、精神障害者にこそ公共交通機関での割引は必須だ、と考えます

例えばですが、精神障害者で「てんかん」を抱えている人は少なくありません。てんかん患者は車の免許の取得も基本的にはできず、公共交通機関での移動を強いられます。

しかし、路線バスやコミュニティバスはともかく、鉄道利用で割引が受けられず通常運賃を請求されるのはなんか違うと思います。
普通の方がご自身の判断で鉄道を利用するのならば通常運賃を払うことは妥当です。ですが、公共交通機関を利用しないと移動ができない精神障害者が通常運賃を払う必要があるのは、アンフェアです。

精神障害者は増える一方で、通院や福祉施設(就労移行支援や就労継続支援など)に通所する人も多いと思われます。定期的な通院が必要ということもあり、普通の方と同じくらいの高頻度で自宅外へ移動する人もきっと多いことでしょう。

もちろんその中には鉄道を利用している人も多く、大半の方は普通運賃の支払いを求められているはずです。公共交通機関でないとなかなか移動できない人も多いですから、鉄道運賃の割引制度の拡大は国ベースでやっていかないといけないです。

みんなの力で精神障害者割引を広めよう

PoliPoliという政策リクエストができるサイトで、鉄道の精神障害者割引の導入を求めるリクエストが掲載されているのをTwitter上でご紹介いただきました。
現状に不満を持っているのは、僕だけではないのですね。

200人以上がリクエストに賛同すれば、国会議員などの政治家に声が届くようになる仕組みらしいです。

賛同はユーザー登録の必要がなくボタンを押すだけ。ぜひ、賛同ボタンを押して精神障害者が移動しやすくなる仕組みを広げていきましょう! みず

最後まで読んでいただき、
ありがとうございました!

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