どうも、みずにゃんです。
スーツを普段着ない僕が、スーツを買う
「洋服の青山」と聞いて、99%の人が思い浮かべるのはスーツだと思います。
私事ですが、スーツを新調することになり、最寄りの青山に行ってビジネススーツをセットアップで購入しました。スーツも昔に比べれば高い買い物ではなくなったなぁ、と感じています。
普段の僕はスーツなんか着ません。サクッと着替えられないし、動きにくいし、洗いにくいし。昔は裏地にウールが入ってて感覚過敏の僕からしたら、もう最悪の服ですよ、あれ。
仕事だってカジュアルです。めったに着ないだろうものをハンガーラックに陣取らせたくないので所有すらしてませんでした(笑)
ただ今回はどうしてもスーツが必要だったのです。実家から借りようとするもサイズや色が合うものが見つからず、結局ネクタイ以外すべて新調するハメとなりました。
で、レジで会計するときに目にしたのが、「学生服」の3文字の入ったポスターです。
よく見ると、申し訳無さそうな感じで、角っこに学ラン(正式には「標準型学生服」といいます)とセーラー服が鎮座していたのです。(※店内を撮るのは問題あると思ったので実際の光景は皆さんの目で確認してみてください)
現在、洋服の青山では「標準型学生服」と「学校指定の制服」を取り扱っているようです。
「標準型学生服」は汎用の学ランのことで、全国の店舗やオンラインショップで購入できます。僕が目にしたのも、おそらくこれのことでしょう。
オンラインでは学ランしかみあたりませんが、店頭にセーラー服も飾ってあるということは、汎用セーラー服も扱っているのでしょうか。
もうひとつの「学校指定の制服」というのは、各市が指定したブレザータイプの制服です。
こちらは全国で扱っているわけではなく、一部店舗が所在地の市の指定制服を販売する形式のもので、公式サイトでは4市ですでに導入されていることがわかります。
うちひとつが神戸市なのですが、残り3市はすべて愛知県で、一宮市、半田市、春日井市。
神戸市はわかりかねますが、愛知県3市に関しては、すべて近年のブレザー化で「市内全校共通のブレザー」が指定制服として導入されています。
洋服の青山が学校制服に参入したワケ
実は洋服の青山が学校制服に参入したという話は、去年(2023年)春に地元の制服店が廃業なされる前のタイミングで、お店の方から耳にしていました。
2023年春の時点で、すでに半田市の中学校制服が洋服の青山で取り扱いを始めていたそうです。(余談ですが半田市には「青山」という地名があり、「青山」を名乗る駅や中学校もあったりします)
最大の理由というかきっかけは、間違いなく学校制服のブレザー化・ジェンダーレス化でしょう。
ブレザーがスーツのノウハウを最も活かしきれる商材でしょうからね。
学校単位ではなく、市単位での指定となったことで売りやすくなりましたし、買う側からしても「洋服の青山」のブランドで信頼して購入できます。
要は、青山サイドにも、顧客(=生徒・保護者)サイドにも、市(教育委員会)サイトにも、メリットを多く生めるから参入したわけです。
「洋服の青山」側のメリット
スーツ需要縮小の補填が効く
青山の主力商品でもあるスーツは需要減少と競合他社の猛追もあって、スーツやフォーマルウェア部門は苦しい状況が続いています。
カジュアル系のスーツで勝負しようとなるとユニクロという強すぎるライバルがいますし、スーツに特化するにも限界を感じていたと思われます。
従来からメンズカジュアル衣料は取り扱いを強化していたようなのですが、それでもコロナ禍の打撃のダメージは回復することができず、利益は大幅に減り不採算店舗の閉店ラッシュが続いていたことは会社概要で伺い知れました。
少子化に伴うフレッシャーズの減少、カジュアルOKの職場の増加、リモートワークの普及、などでスーツの需要が減っていく一方。
頭打ちな状況を打破するのに、青山は学生服を活用することにしたのです。少子化が進んでも、需要が絶対には枯れることがありませんから、一定の安定した収支を見込める商材として有用と見ているのでしょう。
売りやすい
従来の学校制服、特にセーラー服は学校単位で微妙に異なるデザインをしていて、学校の制服事情にある程度詳しくないと販売するのは難しかったのではないでしょうか。
これが市内共通となったことで、どこの中学校の所属でも同じものを売ることができるため、展示や在庫を並べるスペースを最小限にでき、アルバイトスタッフでも接客が可能になります。専門スタッフを必要としないから人件費を抑えることもできますね。
ノウハウをMAXに活かせる
青山で販売している学校制服はスーツと同様に、自社生産ということらしいです。スーツで減産しているラインを使ってブレザーを作っているようです。
とくにブレザーはスーツにきわめて近い構造・材質をしているからスーツ生産のノウハウに長けている青山にとって、学校制服は朝飯前、なのかもしれません。
参入が低コスト
スーツの生産ラインを活かし、かつ既存の店舗網で販売できる体制なので、参入は非常に低コストです。
指定制服は市がデザインや仕様を決めてくれるため、市が定めたガイドラインに沿って作って売ればいいだけですから、開発コストもかなり低廉にできているのではないかと感じます。
客から見たメリット
行きやすい
従来の制服店は、個人店が多かったし入りにくさを感じる人も多いかと思います。お店の場所も商店街の中で車で行きにくかったり、定休日があったりと、行きにくい要素も少なくはないはずです。
全国チェーンの青山ならそんな心配はほぼ無用で、基本ロードサイドで車で入りやすい場所にありますし年中無休で営業していますから、いざというときに行ける、というの点でめちゃくちゃ強いんです。
買いやすい
従来の制服店だと人員的な問題で採寸・試着が予約制のお店なんかもあると思います。アポ無しで行くと、先客がいて延々と待たされることも・・・。
青山店頭には採寸できるスタッフが複数在中しているはずなので、アポ無しでも採寸してもらいやすいと思います。もちろん採寸のプロですから、制服専門店よりも信頼性が落ちる、そんなことはありません。
支払い方法や仕立ての納期など、従来の制服店より融通がききやすい点も買いやすさにつながっています。標準型学生服(学ラン)は店頭ではポイントも付けられるようです。
購入費用の低廉化(=安くなる)
青山が自社生産することで、本体価格も抑えることができるはずです。カンコーやトンボなどの専門メーカー製と比べて安価な価格設定にしているようですね。
ブレザー制服は本体価格こそ高い傾向ですが、サイズアウトの際に買い直しが必要となる学ランやセーラー服とは違い、予備の裏地を伸ばすことである程度の成長に対応できる構造のため、サイズが小さくなっても修理で済みます。
3年トータルで見ればブレザーのほうが安く済む、という点でもブレザー制服は受け入れられているのでしょう。
「洋服の青山」の参入による問題点は?
ただ、青山が参入することで既存の制服メーカーと制服店が岐路に立たされていることも事実です。実際に、ブレザー化の波と合わせるかたちで廃業した制服店はいくつも見てきています。
現状の青山店頭では、学生服以外の学用品、たとえば体操服や通学カバンの類は取り扱っていない感じのようです。
青山が体操服などを売らないのは、既存の制服取扱店が潰れないように、という配慮から来ているのかな、と感じる僕がいます。
(それ以前に体操服は変わっても学校ごとに違うデザインをしていますし、在庫管理の煩雑さが最大の理由でしょうけど・・・)
ただし小学校などを中心に体操服の指定をやめて汎用化している流れも一部でありますし、その流れが中学高校まで拡がってくれば青山が汎用体操服を売り出す可能性までは否定できません。
既存の制服メーカーや制服店にとっては、青山は脅威なのではないでしょうか。少子化で需要が細くなってきた昨今ですから、ひょっとしたら協業関係が築かれていくかもしれませんし、今後も注目です。
制服の買い方が変わるかも?
制服は制服店で買うもの。そんな概念を打ち破った洋服の青山。良くも悪くも考えが古くなりすぎた学校制服市場に、ひと風吹かせた存在であるのは間違いないですね。
今後も青山の動向には注目していきたいものです。 みず