どうも、みずにゃんです。
前回、多田オーディオさんの営業終了の記事でちょこっと話に出た、QUAD ESL57について深掘りしていこうと思います!
エレクトロスタティック型のラウドスピーカー
世界中で使われているオーディオ用スピーカーのうち、大半は「ダイナミック型」のスピーカーでしょう。環境による劣化が少なく、取り扱いのしやすさはダイナミック型が断然勝ります。
その一方で、「エレクトロスタティック型」とよばれるタイプのスピーカーもあります。静電気を利用して薄い振動膜を振動させることで音を鳴らす仕組みのスピーカーです。日本では「静電型」とも「コンデンサー型」ともいわれています。
ヘッドホンの分野では日本のSTAXのコンデンサー型イヤースピーカーが有名で、実際にこのブログでもSTAXのコンデンサー型ヘッドホン(イヤースピーカー)はたびたび登場しています。
エレクトロスタティック型のスピーカーで最も名声を挙げたのが、英国のクォード(QUAD)というメーカーです。QUADは世界で初めてエレクトロスタティック型スピーカー「ESL」を開発・発売したメーカーです。
QUADのESLは1957年に改良型「ESL57」がリリースされ、その後「ESL63」「ESL63PRO」と続いていきました。
エレクトロスタティック型の最大の利点は、原音にほど近い、音色に富んだサウンドを奏でることでしょう。STAXのイヤースピーカーでダイナミック型を大きく凌ぐ音が出るならば、もちろんラウドスピーカーだって一緒のはずです。
実は、STAX導入後、ラウドスピーカーについてもエレクトロスタティック型を導入しようと計画を立てていました。個人でレストアをしている方がいると知り、ジャンクのESL63PROを引き取りレストア前提で自宅に保管しているのですが、レストア費用の予算をなかなか捻出することができず、今に至るまで実現が叶いませんでした。
次第にオーディオ熱も下がり、一時期はスピーカーで音楽を聴くこともめっきり減ってしまっていたのですが、多田オーディオの営業終了の話で熱が再燃した僕は、自宅のオーディオシステムの見直しを考えるようになりました。
とくにスピーカーは小型のInfinitesimal IIIがメインとやや手薄気味な部分があるような感じがしたので。
それは、奇跡的に眠っていた
多田オーディオさんへ貴重な資料を回収するためにお伺いする回数を重ねるうちに、店内が片付いていき、最初は全く踏み入れることができなかった部分には、まだ引き取り先も決まっていない在庫が積まれていたのですが、そのなかに、QUAD ESL57がとてもきれいな状態で眠っていたのです。
閉店間際ということで大量に在庫を購入するお客さんも複数いたにもかかわらず、このESL57だけは、誰も目に付けていなかったのです。
しかも、このESLは店頭在庫の中でも数少ない「完動品」ということがわかり、ESLを購入する絶好のチャンスと捉えた僕。
在庫処分ということで比較的安価な価格にしていただきいったんそれで商談成立していましたが、受け取りの際にさらに値引かれ、”破格値”というべき価格で購入することができました。
揺れずに運べ!輸送ミッション
困ったことに僕は車を持っていないため、自宅までの運び込みの問題もありました。
そこで、椿くんに協力してもらい、レンタカーを借りての搬出作戦を行うことに。レンタカーはホンダN-VANです。
僕の想定通り、N-VANに余裕で入りました。静電型スピーカーは構造上揺れにかなり弱いので、道路のガタが少なめの道路を選んで、古美術品を運ぶかのように慎重に移送していきます。45分ほどで矢場町の店舗から自宅までの輸送ミッションは無事成功。
椿くん、ありがとう!!
今見れば、ある意味スタイリッシュ
スピーカーといえば箱型のエンクロージャーのイメージもしますけれど、このESL57は昔の電気ストーブのような外観をしています。レトロなデザインで重厚感あると思いますし、ダイナミック型スピーカーを見慣れた身からすると、流線型の見てくれはスタイリッシュにすら感じます。
幅はそれなりに取りますが、高さは腰高くらいで、フロア型スピーカーとしてはコンパクトに抑えられている感じがします。重量も約18kgでそれほど重たくはありません。
シリアルナンバーは連番で、1975年ごろの製造の個体。約半世紀も別れることなくペアを組み続けてきた証拠です。ちなみに「ESL57」という呼び方は俗称で、シンプルに「Electrostatic Loudspeaker」が正式名称です。
電源インレットは特殊なもので、ESL63以降の汎用ではありません。付属のケーブルはオリジナルか不明ですが、コンセント1口でペア分のインレット付きのものです。
入力端子はバナナプラグ対応のものに交換されていました。
ナチュラルな拡がり方で、長時間でも気持ちよく聴ける
Aurex SC-Λ90Fに接続して音を出してみました。ESL57は真空管アンプでのドライブを前提としている設計のため、50W+50Wくらいのパワーアンプなら普通に鳴らせます。静電型の構造上、逆にハイパワーすぎても過大出力で故障のリスクもあるため、アンプを選ぶスピーカーです。
SY-Λ90Fは100W+100Wの出力なのでESLも余裕で鳴らせます。Infinitesimal IIIを鳴らすのとほぼ同等のボリュームで、充分な音量が取れています。
コンディションはノイズも全く入らず快調。まず感じたのは、音の拡がり方が秀逸だということです。ナチュラルな拡がり方で、同じ楽曲のはずなのに、とても生き生きとしています。
エレクトロスタティック型は低域が弱いとよく言われていますが、僕のESLは低域もしっかりと鳴り、まったく不足感は感じません。むしろ床が共鳴するため板を敷いての対策を考えているくらいです。
GWの1週間ほど、昼夜問わず聴いてみました。小さい音量でも迫力を感じられるため、深夜の集合住宅でも使いやすいです。自然な音なので、聞き疲れもしないです。STAXの登板頻度が減ってしまう…。
音楽ソースもいろいろ聴いてみました。レコード、CD、Apple Musicのストリーミング、テレビの音声。楽曲もクラシックからジャズ、J-POP、アニソン、R&Bまで幅広く聴いてみましたが、ボーカルもよく伸びるし、金管楽器の伸び方はクリアだし、低域も上品すぎない適度な締まり方。
MISIAを聴いてみると、そそり立つ迫力で聞いていて楽しいし、シャープネスも高い出方なので現代音楽も適度なメリハリが生きています。
ESLが特に苦手とするジャンルはないように感じますし、オールマイティに使えるスピーカーもそうそうないのでは、という感じがします。
実のところ、透明感についてはもう一歩ほしい感覚はあるのですが、これはスピーカーケーブル(Van den Hulのエントリーモデル)が足を引っ張ってるのだと思います。スピーカーケーブルを変えたら、もっと化けてくれるでしょう。
エレクトロスタティック型の要は保存環境!?
エレクトロスタティック型はほこりや湿度に弱い構造のため、使用しないときの保存環境は気を使います。使用しないときはカバーを被せることにして、ダイソーで売っている自転車カバーを防塵カバーとして活用しています。
これから梅雨の季節。鉄筋コンクリート造で高温にもなりやすい環境なので、湿気対策に関しては除湿器やエアコンの除湿モードも生かしながら状態維持を心がけたいと思います。
スピーカー沼のゴールでお待ちしています
ESLはダイナミック型のスピーカーを凌駕する素晴らしい音色を奏でてくれる、至高のスピーカーなのは間違いないでしょう。
エレクトロスタティック型の音を聴いてみないと、スピーカー沼のゴールには辿り着くことはないでしょう。ESLは、理想形のひとつであり、スピーカー沼の“終着点“なのかもしれません。
僕は念願のラウドスピーカー&ヘッドホンの両環境をエレクトロスタティック型にできましたので、エレクトロスタティック型の奏でるナチュラルなサウンドを堪能していきたいと思います。 みず
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました!
こちらもチェックしてみてください!