東芝がオーレックスブランドで最後に出したプリアンプが「SY-Λ90」でした。Λコンデンサーを搭載し、オーレックス自慢の現代的でシャープネスな音を比較的低価格で実現したオーレックスの集大成です。今回は僕のオーディオシステムの一翼を担うSY-Λ90を紹介します!
東芝が最後に放ったミドルクラスセパレート”Λ90″
東芝の往年のオーディオブランド「Aurex」は、他社とは違う目線で製品づくりがなされました。
“現代的で、音色変化に富むアンプは作れないものか”
東芝の開発者の思いは、そんな感じだったに違いありません。
1982年。当時”光るレコード”と呼ばれたCDことコンパクト・ディスクが登場し、デジタルオーディオが幕を開けます。東芝オーレックスの開発陣は、この出たばかりのCDの音を活かし、現代的な鳴りをするコンポーネントの開発に着手。
そして、できあがったのが、90シリーズのコンポーネント。フラッグシップのSS-F90スピーカーを筆頭に、オーレックス初のCDプレーヤーXR-Z90などとともに登場したのが、ミドルクラスのセパレートアンプ「SY-Λ90」と「SC-Λ90F」でした。
どちらも、ダブルナンバー機の技術を継承し、Λコンデンサーを搭載。デザインも都市的なものとなり、この年のグッドデザイン金賞を受賞しています。
しかし、いかにも現代的すぎる音が当時のオーディオファイルの嗜好に合わず、あまり売れなかったようです。東芝はこの90シリーズを最後に、本格的なピュアオーディオからは撤退してしまいました。
その音色の良さは、あの音にうるさいイトケン氏がセカンドシステムとして長年愛用されているほどです。
SY-Λ90(1代目)
そんなイトケン氏ご愛用のアンプを、僕もゲットする機会に恵まれました。
今年4月。某オークションにSY-Λ90が出品されていました。18,000円ほどの価格でしたが、終了間際まで誰も入札しておらず、僕が入札したら誰とも競ることなく落札しちゃいましたw
スモークパネルがなかったのと、一部ランプ切れがあるのが安かった理由ですけど、動作は確認済みでしたし、これが送料合わせても2万円だったのはある意味ラッキーだったと思います。
ボリュームにガリはありましたけど、問題なく音が出ました。ショップ改造がされまくって音色もクソもなかったAurex SY-88と比べてハリのある音で、音が完全に化けたのを今でも鮮明に覚えています。
このSY-Λ90は当時ちょっと流行りだったスライドボリュームが使用されており、音質向上に一役買っています。
入力は4系統、プリアウトは1系統のみと割り切った設計ですが、シンプルな構成で個人的には好みです。
SY-Λ90で使われているΛコンデンサーは2個です。
SY-Λ90(2代目)
パワーアンプSC-Λ90Fを無事入手し、SY-Λ90と組み合わせて楽しんでいましたが、イトケンさんからSY-Λ90のトレードを提案されました。
というのも、SC-Λ90Fと同じ出品者[1]遺品整理業者がSY-Λ90も出品していて、それをイトケンさんが落札されていました。
おそらくですが、僕が落としたSC-Λ90Fとイトケンさんの落札されたSY-Λ90は同じオーナーのもとで使われていたのだと思われます。
そして、こちらのほうがランプ切れなし・スモークパネル付と状態が良かったために、今回のトレードに至りました。
やはり、スモークパネルのある方がカッコイイです。都会的な、渋いデザインは今となっては個人的にツボに入りました。この個体もスライドボリュームにガリがありますが、出音は問題なく、SC-Λ90Fといい音色を奏でてくれるようになりました。
モヤモヤが取れた
いやあ、他のプリアンプから乗り換えると、その粒立ちの良さと耳障りの良さに気付かされます。これが、Λコンデンサーの実力なのでしょう。
それでも、ラックスキットA501との組み合わせだと平坦で眠い印象もあったのですが、本来の相方であるSC-Λ90Fにして解決。もう、これ以上望むべくはありません(笑)
上位機のダブルナンバー機と比較すると現代的な音らしいのですが、個人的にはクラシックだとちょっと味付けに不足感があり、逆にA501ではボケが目立ってしまったジャズでは、サックスの音の伸びが気持ちよく聴けました。もちろん、ポップス、アニソン、最近の音楽なら何かけても満足できます。音源ソースが良ければ、ですが。
というのも、Λコンデンサーの持つ、非常に高い解像度によって、ソースの良し悪しがかなり響いてしまうのです。とくに当時はまだアナログが主流で、CDが出たとはいえ、まだCDの音質も良くなく(そもそも録音環境がデジタルではなかった)音のアラが出すぎてしまったのが、オーレックスが売れなかった理由のようです。
それから40年近くが経ち、音楽シーンが完全にデジタルへ移行した今、そのオーレックスの音色の良さが堪能できるように時代がやっと追いつきました。Apple Musicのようなストリーミングだと音の粗さは目立つものの、PCに保存してあるロスレスファイルをそつなくこなしてくれるポテンシャルを持っています。
これ以上は求めるものはない
僕のオーディオシステムを完成域まで行くきっかけを作ったのが、SY-Λ90であることに間違いはないでしょう。あのとき、SY-Λ90を買いさえしなかったら、僕はオーレックスとは関わりを持たず、ラックスマンの退屈な音を聞き続けていたことでしょうから、”イトケンサウンド”、もとい、オーレックスの素晴らしい音を取り入れることができたのがとても嬉しいです。
なので、ずっと使っていきたい一台として、メインシステムで活躍してもらいましょう。
脚注
↑1 | 遺品整理業者 |
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