今日は、うらにゃんとハードオフへ行ったときにちょうど見つけた、パイオニアのオールドヘッドホン「SE-25」をリケーブル改造して遊んでみたお話です。古いコーン型のヘッドホンは、リケーブルによって音は変貌するのでしょうか!?
パイオニアのヘッドホンの製品群は当時最大
かつてのパイオニアは、その社名の通り先鋭的なオーディオメーカーでした。一時期はレーザーディスク等で業界を牽引していく程の強い存在感を放っていたのは一定の年齢層以上の方ならご存知のことでしょう。
実は、民生用のステレオヘッドホンを世界で初めて製品化したのもパイオニアでした。パイオニアの初号機「SE-1」は「ステレオミミー」と愛称まで付けられたほどで、きっと力を入れたかった分野でしょう。SE-1は、皆さんが普段使われているヘッドホンの祖先とも言える存在です。
実際、その後のラインナップはじわじわと増やしていき、70年代は業界で最多クラスのラインナップを誇っています。エントリー機だけでなく「MONITOR-1」などのプロモデルや、果ては純コンデンサー型の高級機(SE-1000)まで手掛けています。
ウォークマンとステレオミニ登場によるソニーの猛追やその後のオーディオテクニカや海外ブランドの規模拡大もあり、表舞台は降りるも、細々と今に至るまでパイオニアブランドのヘッドホンは作り続けられています。
デザインに惚れた
もうかれこれ1年ほど前。うらにゃんと付き合いたての頃、”ハードオフデート”を決行しました。普通の女の子だしこんなのに付き合わせちゃって良いのかな?と思いつつ、ハードオフへ行くと、ジャンクコーナーの青カゴにポロッと入っていたのが、パイオニアの「SE-25」というオールドヘッドホンだったのです。
パイオニアのオールドヘッドホンといえば、2年前に「SE-205」というこれまた古いのをいろいろ改造して、最終的にドライバーの交換までやっています。
SE-25は、そのSE-205よりも更に前のモデルで、位置的にはどちらも同系のエントリーですが、SE-25は細部の作り込みやデザインが特徴です。
その今ではあまり見かけないユニークなデザインに惚れ、手にとってしまいました。1100円なり。
ちょっとウッディな色のハウジングは、どこか昭和レトロな雰囲気ではなく、若い今の女性にも似合いそうな可愛らしいスタイルに感じます。ケーブルの色までこだわっている点は、ヘッドホンに力を入れていたパイオニアだったからでしょう。
ですが、SE-25はステレオミニプラグ登場前のモデルなので、当然プラグは標準プラグです。あいにく、買った当時のオーディオシステムはAurex Λ90コンビとSTAXを基盤とした”ダブルラムダシステム”導入直後であったため、標準サイズのジャックのあるオーディオ機器がほとんどありませんでした。
うらにゃんに付けてみたら結構似合ってたし、撮影用に持っていく価値もあるな、とは思いますが、逆にそうなると長いケーブルがいろいろな面で撮影の邪魔です。
そこで、あることを考えました。
リケーブル化改造に挑戦!
その名も、“リケーブル化”大作戦!
リケーブルなど存在しなかった時代にヘッドホンをリケーブルするのも面白いんじゃないか、と思ったのです。
- ステレオミニジャック化によりスマホなどで使える。
- 断線時の心配不要。ケーブルを新しくするだけ。
- リケーブルによる音のグレードアップが期待できる(かも?)
- ケーブルの要らないコスプレ等での撮影がスムーズに
といったようなメリットがあります。
今回のSE-25の場合、ケーブル片だしなので、リケーブルにするには片側にリケーブル用の端子を付けるだけ。工作も比較的しやすい部類です。今回は、ソニーのMDR-1R/1A等の系統でも用いられている、オーソドックスなステレオミニジャックタイプでリケーブル化します。
SE-25のリケーブル化にあたって、リケーブル機能がある中華ヘッドホンをドナーにしました。この中華ヘッドホンは音がペラペラで100円ショップ系のやつ以下の音だったのでどうせ使わないし、改造のドナーにはもってこいです(笑)
この中華ヘッドホン本体側のステレオミニジャック基盤をSE-25のL側に組み入れます。SE-25側のケーブルが通っていた部分の穴を大きくして、ステレオミニ基盤が嵌るようにしました。あとはその基盤とヘッドホン内部のケーブルをはんだ付けして終わりです。
見てくれと作り込みの精度はともかくとして、リケーブル改造は無事成功しました(笑)
ケーブルを変えたら音は良くなるのか?
今回、リケーブルで音が変わるのかやってみたいと思います。今、手元にある5本のケーブルを聞いて、音の傾向の違いを見てみることにしました。
今回比較で使用したケーブル
- MDR-1RMK2付属のソニー製ケーブル(1.2mのポータブル用)
- Zeskit製ケーブル(ハードオフで110円で発見)
- ドナーとなった中華ヘッドホンの付属ケーブル(平たいケーブル)
- メーカーもモデル名も不明のケーブル。これだけプラグが銀メッキ。
- MDR-10R付属のソニー製ケーブル(1.2m)
①ソニー製MDR-1RMK2付属
弱ドンシャリ。さすがに数万円もするモデルの付属とだけあって、バランスは最も良好だと思います。ただし、高域はやや暴れやすい傾向にあり、音源を選ぶかもしれません。
コーン臭さが抑えられていて、オールドヘッドホンを聞いていると感じなくなります。多少くぐもった印象はありますが、ここ最近のエントリーモデルと比較しても遜色ないどころか、多分現行より良い音している(はず)
②Zeskit製
落ち着いていて、透明感も一歩抜きん出ています。そのあたりは、現行の中華ケーブルの強みなのでしょう。
それにしても、よく伸びます。本当に50年前のヘッドホンなのか、と思いたくなるほど性能を引き出せていると思います。低域の出もまあまあです。
③中華ヘッドホン付属
思ったよりも拡がりがあります。中高域の伸びは想像以上に優秀でした。ただ、高域がギラツキがあり、キンキンとした高域が苦手な方には不向きかもしれません。
低域は不足気味。この部分がバランスを崩してしまっている一つの原因かと思います。
④正体不明
実は、一番鑑賞に耐えたのが意外にもこのケーブルでした。プラグが金メッキでないこともあり、キレがやや劣りボワつきを覚えるところはあるものの、柔和で、あたりの良い明るい音です。
トータルのバランスも良く、スッキリと聴くことができるので、鑑賞にもながら聞きの両方に耐えられるポテンシャルを持っていると思います。
⑤ソニー製MDR-10R付属
明らかに高域に寄っています。高域は綺麗なものの正直キツイ傾向があり、僕には刺さりが強く感じました。エッジの強い音です。
また、低~中域の引っ込みも気になります。ボーカルが遠く、臨場感はMDR-1RMK2のケーブルと比較してもワンランク下だと思いました。個人的には好みじゃなかったです。MDR-10Rの記事のときに音質を高くしなかったのは、ケーブルの影響かもしれません。(材質の差別化がちゃんとされているのだと思います)
総評:思った以上に大健闘
SE-25はコーン型だし、SE-205みたいなモコモコした絶望的な音かな、と正直予想してました。ですが以外や以外、思ったよりも中高域を中心にうまく伸ばして鳴らせています。ややキツめな傾向ではありますが、今どきのエントリーグレード顔負けの音のふくらみがあり、のっぺりとした感じが見受けられないのです。しかも、ケーブルによってここまでキャラが変わるものなのか、というのが驚きでした。
このヘッドホンが売られていた頃は、まだヘッドホンというデバイスはSTAXのイヤースピーカーを除けば、あくまでアクセサリーのひとつに過ぎませんでした。もっぱらモニター用が大半で、まだソニーも消極的でした。
ですが、その頃からヘッドホンのラインナップや質の向上に力を入れていた当時のパイオニアの首脳陣は、“いずれ、ヘッドホンが主役の時代が来る”と確信していたんだと思います。
確かに、ウォークマンに始まり、iPodの時代、スマホでのストリーミングの流れでヘッドホンステレオの時代が本当にやってきて、今はワイヤレスにまでなっています。経営陣変わったせいなのかな、その後パイオニアがヘッドホン市場から失速し転落してしまったのが惜しいです。
SE-25は、そんなパイオニアが一番ヘッドホンに力を入れていた時代の力作。
決して、古いからと侮れないのだな、と思わせられたヘッドホンでした。